備後歴史探訪倶楽部

福山城を中心に備後地域の歴史を中心とした情報を発信しています。

参考文献

   

近年まで福山城について書かれた本で福山城を単独で扱ったものは、「福山城誌」、「福山城」、「久松城」、「備後福山城」、「戦略的に見た福山城」などがあったが、何れも絶版なので容易に入手できるものは皆無となっていた。福山市内の某古書店店主に言わせれば、「売れそうで売れない、それが福山城」だそうである。本サイトで繰り返し述べていることではあるが、市民の福山城に対する認識は他の城と比較しても低いので、本が売れないのは当然といえば当然のことであった。こうした中、2004年に発売された「よみがえる日本の城 7」は全国の書店で入手でき、単独ではないが福山城を詳細に扱った非常に貴重な存在となっていたが、2006年、福山市文化財協会から「福山城」の改訂版である「新版福山城」が約40年ぶりに刊行された※。市内の大手書店を中心に扱われ、発行に際して個人からの支援もあり大変安価(800円)であるが、前述のように需要が見込まれないため再販は期待できず、発行部数は2000部なので早晩入手困難となることが予想される(2007年現在)。

※多くの新聞で31年ぶりや20年ぶりの発行と誤報している。例えば、産経新聞(広島)2006年11月28日『リニューアルした「新版・福山城」を発刊』では「福山城」初版発行から31年ぶりと書かれているが、発行されたのは1966年であり、これは40年ぶりの間違いである。また、山陽新聞備後版2006年11月15日『福山城の歴史、魅力紹介 市文化財協会が20年ぶり新版』では約20年ぶりに再編集と書かれているが、20年前に発行されたのは「久松城」であり、これは「福山城」の新版とは呼べず、正確ではない。

福山城の書籍の系統

福山城の書籍には主に2系統がある。まず、福山市が発行に関与したもので、「福山城誌」、「福山城」、「久松城」、「新版福山城」がこれにあたる(以下、第1系統)。そして、個人が発行した「備後福山城の研究」、「備後福山城あれこれ」、「備後福山城」である(以下、第2系統)。

福山城の書籍の系統

第1系統

福山城の本の嚆矢といえるのが、1916年に発行された「福山の今昔」である。ただ、この本は福山の歴史全般を扱ったものなので、厳密には福山城の本とはいえない。この本から内容を福山城に特化し加筆・修正したのが「福山城誌」である。福山城誌は極めて濃密な内容を持っているが、福山城の価値を誇張するあまり文献にない事柄を筆者の想像で補ったと思われる記述も多く含まれている。しかし、福山城誌は長らく検証されることのないまま、福山城のバイブル的な扱いを受けていた。

そして、これを参考に書き起こされたのが1966年に発行された「福山城」である。「福山城」では「福山城誌」の不審点を指摘する部分もあるものの、これに対する根本的な検証は行わず「福山城誌」の解説を基本的に踏襲している。これから章の構成を変更し「福山城」以降の変遷や城下町の解説等を加筆したのが「久松城」である。この本は福山市が発行に関与したわけではないが文章は「福山城」の殆ど丸写しであるため、この系統に属する。

そして、「福山城」に「久松城」の加筆分を加えて誤記を訂正したのが「新版 福山城」である。「新版 福山城」では「久松城」以降の変化を書き足し、周辺地図や城下町名一覧などを付録として付けるなど、「福山城」の集大成と呼べる本となっており、発行元が行政側の立場(福山市教育委員会)でありながら、福山城に無関心な市の施策を批判するなど、福山城の価値を公正に評価しようとする姿勢も見られる。しかし、はやり「福山城誌」から続く根拠の不明な記述については検証されていない。

このように第1系統の本は福山城誌の影響を強く受けているのが特徴となっている。

第2系統

個人が出版したもので、著者が郷土史の会報(芸備地方史研究、文化財福山)に投稿した福山城に関する論文が元となっている。論文の多くは「福山城誌」から続く俗説を検証したもので、「備後福山城の研究」、「備後福山城あれこれ」はこれらの論文を纏めたものである。そして、これらの成果から福山城の本として書き起こされたのが、「備後福山城」である。「備後福山城」は「福山城誌」からの俗説を正そうとしているが、その主張には独善的な見解や誤解が多く含まれており、筆者の意図とは逆に誤りを再生産している。

このように、第2系統は第1系統のアンチテーゼとなっている。

上記のように、福山城の本には信頼を置けるものがないので、当サイトではコンテンツを作成するにあたって出来る限り、古文書、次いで古記録を基礎として独自に検証し書籍類については参考に留めるようにしている。そのため他の書籍で書かれている内容であってもその出典が明らかでないものは記載していない。

題名(執筆者) 出版者(出版年)
- 書籍-
備後福山城(吉田和隆) 吉田和隆(1998年)
図説正保城絵図(千田嘉博) 新人物往来社(2001年)
國寶史蹟 福山城誌(浜本鶴賓) 福山市(1936年)
福山城(村上正名) 福山市文化財協会(1966年)
新版福山城(福山市文化財協会) 福山市文化財協会(2006年)
久松城(村上正名) 芦田川文庫(1985年)
復元体系日本の城 6(北野隆) ぎょうせい(1992年)
福山市史 中巻(福山市史編纂会) 福山市(1968年)
福山市史 下巻(福山市史編纂会) 福山市(1978年)
福山城築城三百七十年記念誌 築城三百七十年記念行事実行委員会(1993年)
よみがえる日本の城 7 学習研究社(2004年)
備後福山城の研究(吉田和隆) 吉田和隆(1995年)
備後福山城あれこれ(吉田和隆) 吉田和隆(1995年)
戦略的に見た福山城(西本省三) 福山商工会議所(1992年)
福山の今昔(浜本鶴賓) 立石岩三郎(1917年)
-報告書-
福山城三の丸跡発掘調査既報 広島県草戸千軒町遺跡調査研究所(1987年)
山陽新幹線敷地内遺跡発掘調査報告書 広島県教育委員会(1972年)
福山城東外堀跡発掘調査報告書 福山市教育委員会(2006年)
-編纂物-
水野勝成覚書 古文書調査記録第一集 福山城博物館友の会(1978年)
結城水野家文書 古文書調査記録第四集 福山城博物館友の会(1980年)
小場家文書 上巻 福山市教育委員会(1974年)
小場家文書 下巻 福山市教育委員会(1976年)
備陽六郡志
水野家記 続備後叢書(中)(徳能正通) 歴史図書社(1973年)
福山城開基覚 続備後叢書(中)(徳能正通) 歴史図書社(1973年)
福山領分語伝記 続備後叢書(中)(徳能正通) 歴史図書社(1973年)
水野記 広島県史 近世資料1 広島県(1973年)
-絵図-
小場家絵図 福山城博物館蔵
備後国福山城絵図 正保城絵図 国立公文書館蔵
備後国福山之城図 日本古城絵図 国立国会図書館蔵
備後国福山之城図 日本古城絵図 国立国会図書館蔵
備後福山之城図 日本古城絵図 国立国会図書館蔵
備後国福山城図 諸国城郭絵図 国立公文書館蔵
福山城内大絵図 安永絵図 備後護国神社蔵
諸国当城之図 広島市立図書館蔵
備後福山城図 岡山大学附属図書館蔵
福山城下御家中町絵図 誠之館同窓会蔵

 - 考察