名古屋城天守木造復元は建設費を回収できるのか?
2016/04/06
年間400万人は達成可能か?
報道によると、
名古屋城 天守木造復元に500億円
の費用がが見積もられたとのこと。
河村市長は「年間400万人を呼び込み、税金は投入しないでやっていきたい」と明言しているが、これは極めて達成困難な目標だろう。その理由は次の通りである。
入場者数と収入の見込みは?
名古屋城の入場者数は近年(本丸御殿復元前)では年間100数十万人前後であり、近世城郭で2015年度の入場者数全国1位は姫路城の286万人となっている。また、統計上の最高記録は1989年度の名古屋城で389万人だが、先の河村市長の発言はこの数字を念頭においてのものと思われる。
完成当初は大きな注目を集め、相当の入場者数を記録するのは間違いないが、城郭は基本的に文化財であるため、アミューズメント施設のように施設の更新や増設等のテコ入れが難しく、入場者数は一巡して落ち着くと予想される。
したがって、全国の城郭入場者数統計の推移を見ると、たとえ入場者数1位をキープし続けたとしても、いずれは年間200万人を切ると思われる。
ここで、仮に当初の入場者数を年間400万人とし、入場料を全城郭最高の姫路城と同額の1,000円で考えてみる。すると、単純計算で年間40億円の収入となり、その他売上を含め50億円程度の収入は見込めると思われる。500億円を割れば10年で建設費分の収入を期待できる。
ただ、この収入は当然ながら全額を建設費に充当できるはずもなく、仮に半額程度を当てられ、入場者数が10年で年間200万人まで徐々に落ちていくとすると、500億円達成まで40年~50年を要すると見積もられる(細かな計算は省略する)。また、木造建築は4、50年毎に定期的な大規模修理が必要であり、建設費の償却もままならない間に巨額の修理費用が発生することになる。
ちなみに、姫路城の平成大修理の費用は24億円であるが、名古屋城天守の規模は床面積で姫路城の倍以上である…
もっと言えば、金利はどうなるのかという問題等もあるのだが、少なくとも、甘々に見積もっても建設費を入場料収入等のみで回収するのは難しいことはおわかりいただけるだろう。
名古屋城のポテンシャル
ただし、税金を投入しなくても寄付金や1口城主などの”善意”に頼れば程度の費用を賄える可能性はある。例えば、昭和6年に再建された大坂城天守閣は建設費の全額である150万円(現在の600億から700億円)の寄付が集まっている。また、直近では、大洲城天守は建設費15億のうち、約1/3にあたる5億円の寄付を集めている。
そして、名古屋城天守は史上最大(床面積では)かつ全国の焼失した天守の中で唯一ほぼ完全な復元が可能であるという、他の城に比べて圧倒的なアドバンテージを持っている。
つまり、500億円という巨額の建設費が「無理」ではなく「難しい」というレベルで語れるのが名古屋城のポテンシャルの高さなのである。